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BBS-bib/15

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言語習得研究のための文献・資料・情報

 Barrett, L. F. (2017) - sugiura (2021年03月13日 07時54分49秒)

Barrett, L. F. (2017). How emotions are made: The secret life of the brain. Houghton Mifflin Harcourt.


感情はどんなふうにできているのか、というタイトルの本ですが、狭い意味での感情ではなく、人が頭の中で概念としての気持ちと言語をどうやって記憶・処理しているのか、という話です。
これはすごい本です。
ポイントは、経験から予測する、ということです。そして人は(というか脳は)常にそれをしているのです。生まれて(生まれる前)から死ぬまで。
Usage-based language learningも、結局は、経験、ということです。
Statistical learningというのも経験ということです。
頻度効果も経験ということです。
普遍文法は、経験から予測生成のパターンに普遍的な「規則」があるというわけです。
メタファーは、予測のパターンです。
プロトタイプは、予測のもとになる具体的な「形」です。
脳の中にあるのは、ニューロンのネットワークです。「単語」は入っていません。
ニューロンのネットワークがどのように形成されるのか、ということをイメージして「単語」はどのように記憶されるのか、ということを考えてみてください。

  • 感覚として同時にインプットされた情報がニューロン内で同時に活性化される。その活性化されたニューロンどうしが何度も活性化されると一つのまとまり(ネットワーク)が成り立つ。その活性化されたまとまりのニューロン群が、一つのまとまりとして概念となり、その概念に言葉という「ラベル」がつけられると、その概念の処理が効率的になる。
  • 感覚から情報がインプットされることが「経験」。経験ごとに活性化されたネットワークのかたまりができる。そうしたかたまりが相違が認識される。同じ部分、つまり共通する部分が「パターン」として認識され、違っている部分が「特徴」として認識される。
  • 共通する経験の元になる個々の経験はそれぞれが具体的なものであり、その具体的な情報と、そこに見いだされる共通のパターンという情報は性質が違う。
  • 共通のパターンを見出すということが、「抽象化」というプロセス。
  • 抽象化は、階層的に、どんどんと抽象化される。