伊藤康祐君の死を悼む

大学のメールボックスに本が入っていた。また献本をいただいたかなと思って差出人を見るが、どうも見慣れない名前。
研究室に戻って開けてみて表紙の写真を見て「あれ?」と思う。伊藤君だ。数年前に私の担当した英語の授業の受講生。
法学部2年生後期の「英語セミナー」で、英語文章構成法を教えたときの受講生。翌年「英語ステップアップ」で「ぎゅっとe」(上級)を試行的に行った授業にも出てくれていた。
 
「ぎゅっとe」のオンライン掲示板に英語の勉強法について書き込みをしてくれて、それがきっかけで彼が書いているブログも見たことがあった。
 
ある朝、名大方面から八事日赤方面に向けて自転車で走っていると、伊藤君とすれ違った。後日、あのあたりに下宿しているのかなと思って聞いてみたら、そうではなくて、八事で地下鉄を降りて、そこから名大まで運動のために歩いてきていると言った。
 
英語はよくできた。「英語セミナー」ではクラスメートの投票により「Best Essay賞」に選ばれた。
英語の勉強法も自分なりに工夫をしていて自律して勉強していける学生だと思った。
国際的な弁護士になりたいと言っていた。
 
ハッキリとした目標と、それを実現させるための自律力、意志の強さを感じさせる学生だった。
しかし、それでいて控えめ。誠実さを感じさせる。
 
運動のため八事から名大まで歩くというの、いまどきの大学生でやりますか?別に太ってないどころかむしろやせ形。
 
しっかりした学生もいるもんだと感心した。

ぱらぱらと本をめくってみて、「え!」っと驚いた。2009年3月29日急逝。

亡くなった後、ブログを書いていたことをご両親が知り、それを本にして出版したのだった。そのブログの中に私の「英語セミナー」で「Best Essay賞」をもらったことが書いてあって、それで、ご両親が私宛に本を送って下さったのだった。
 
一人息子だったそうだ。悔やんでも悔やみきれいないと思う。
こういうすばらしい若者が日本にいること、そしてそういう若者を失ってしまったこと、日本にとっても惜しいことだと思う。
 
ご冥福を祈るしかない。

http://www.sangokan.com/books/978-4-88320-492-2.html

伊藤康祐君の死を悼む” への2件のフィードバック

  1. もう一つ思い出した。
    受験のときに、数学の問題を速く解くために、二桁のかけ算を暗記していました、と言っていた。
    すごいことを考えるもんだと、感心した。

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