中学生のスピーキングにおける流暢さの発達的変化

杉浦 正利, 江口朗子, 阿部真理子, 村尾 玲美, 古泉 隆 , 阿部 大輔

本研究では、日本の中学生3学年(約220名)を対象に、3種類の英語発話タスクを年に2回(7月と3月)実施することにより収集された縦断的・横断的話し言葉コーパスを用いて、流暢性の発達的変化を観察した。流暢性を表す指標として、無声ポーズやフィラーを挟まない流暢な産出単位の長さと、1分あたりの単語数に基づく発話スピードを算出した。非流暢性を表す指標として、発話量あたりの無声ポーズ数、フィラー数、繰り返し数、自己修正数の4つを算出した。一般化線形混合モデルによる分析の結果、流暢性の2つの指標は縦断的にも横断的にも向上がみられた。特に発話スピードの発達が顕著であった。一方、非流暢性指標のうち無声ポーズは縦断的・横断的な減少が確認されたが、残りの3つの指標については、発達初期の低学年で上昇したのち高学年で減少するという興味深い現象が観察された。このことから、非流暢性とされる言語特徴は一様にネガティブな特徴とは言えず、むしろ学習者の試行錯誤による言語発達過程を表す重要な言語特徴である可能性が指摘される。

Developmental Changes in Fluency in Junior High School Students’ Speaking
https://da.lib.kobe-u.ac.jp/da/kernel/0100487721/0100487721.pdf

PRINT ISSN=21876746, ONLINE ISSN=24352632